- 書籍データ
- タイトル 夢をかなえるゾウ4 死神とガネーシャ
- 著者 水野敬也
- 発行所 (株)文響社
- 2020年7月14日 第1刷発行
- 2020年8月14日 第3刷発行
この作品が一番心に刺さったわけ
私がこのシリーズの作品を読んだ順番が「0→1→2→3→4」になったのは、偶然のことだったのですが、この4が私にとっては一番心に刺さりました。ほかの作品もやらなきゃと思うことは多かったですが、これは私自身に課せられた課題といっても過言ではありませんでした。(実際の順番は1→2→3→4→0)
というのも、プロフィールには書いてありますが余命宣告こそなかったものの、5年前私は乳がんの告知を受けました。がんも大きく複数の転移もあり、告知を受けた当初の私は本当に死を覚悟しました。ただその時の先生の「まだ間に合います」の一言を励みに、放射線治療・ホルモン療法・抗がん剤治療・手術・再度のホルモン療法を経て、現在二回目の抗がん剤治療を受けていて、フルタイムの仕事も続けています(定年も過ぎているので、そろそろパートに切り替えるつもりではいますが、周りの理解と協力の元、病人には見えないと言われるほど普通に生活ができるようになっています)
だからこそ、この作品の主人公の気持ちは痛いほどわかりましたし、その意外すぎる結末も私はすんなりと受け入れることができました。
私たち夫婦には子供がいないので一人になってしまう夫の将来と、年老いて一人暮らしの母のことが一番の心配事でした。この主人公も残される妻と子供のことが何よりも心配なんですね。ずっと一緒に過ごすことが唯一の夢なのに、それがかなわないと思ったとき、この主人公はガネーシャの課題をこなすことで、自分の家族にお金を残してあげようとします。
余命3か月を宣告されたサラリーマンとガネーシャとの出会い
人生の設計が根底から覆る日 それはある日突然やってくる
会社帰りに健康診断の結果を聞きに病院に来たサラリーマンの僕は、余命3か月の宣告を受け、ショックによる吐き気で病院のトイレに駆け込みます。そして医者に言われた自分の病状を思い返して、家のローンや妻と娘の将来の不安でいっぱいになります。彼がどうしたらいいのかわからないままトイレでうずくまっていると、個室の外での意味不明な会話が聞こえてきます。そっとドアを開けてみるとゾウが白衣を着ていて、ベレー帽の男と話しています。最初は余命宣告の話から縄文杉の話になり…二人は漫才の練習中のようで、僕は「これは夢だ」と思います。
僕が目覚めると自宅のベッドでした、いつものように娘の晴香がいて、妻の詩織もいます。時間を聞くと夜の八時なので、自分がどうして自宅で寝ていたのかが分からなくて混乱していると、詩織が一緒にいた人が連れてきてくれたと言います。食卓に行ってみるとそこには夢の中と同じゾウが座っていました。
そして二人きりになるとゾウは「ワシ神様やねん」と名乗り、医者から余命宣告されたのは夢ではないと言います。それを聞いて神様なら病気を治してという僕に対して、それはできないがアドバイスはできると言います。それを聞いた僕は…
アドバイスなんていらない。
僕が望むのは、このまま生き続けて家族と一緒に過ごすことだ。それだけなんだ!
p37
それを聞いたゾウはしばらく黙って煙草を吸っていますが、突然冷たい風と共に聞き覚えの無い声がしました。そこに現れた死神がゾウに挨拶すると、僕は玄関にあるガネーシャの置物を思い出しました。しかし二人は神様らしからぬコントの話を始めます。そして話題を変えて死神がろうそくを取り出し、このろうそくはあと90日ぐらいの長さだと言います。そして死神はお前に必要なのはガネーシャのアドバイスだと言い切ります。
人間の姿になり親戚のおじさんということで家に住み始めたガネーシャは、僕に残りの時間に何をしたいか聞きます。僕は「家族のためにお金がほしい」と答えます。1千万円のつもりで指を1本立てたのを見たガネーシャが、一人合点で「1億やな」と。とにもかくにも僕はガネーシャの「課題」を始めることになります。
本来、夢とか成功ちゅうのはな、誰にでもできることを実行し続けるだけで手に入れられるもんやねん。そのことは、夢をかなえた人らはみんな知ってることやねんで。でも、世の中のほとんどの人たちは、「こんなことやって意味あるの?」とか「面倒くさい」とか言うてやらへんから、「誰にでもできることを実行し続ければ夢がかなう」ちゅう事実にまでたどれつけへんねんな。
そこでや、ワシの教えには注意事項があんねん
教えが理解できなくても必ず実行する
P53-54
しかし最初の課題を言われた僕は、怒りのあまり「ふざけるな!」と叫んで店を飛び出してしまいます。
死神からのアドバイスとは?人が死ぬ前に後悔すること
僕が帰宅するとそこには仲良く食卓を囲む家族とガネーシャの姿がありました。ガネーシャへの怒りが収まらない僕がそのまま部屋に閉じこもると、死神が現れて声をかけてきます。
「一人の死は悲劇だが、100万人の死は統計上の数字に過ぎない」
この言葉を残したドイツの軍人、アドルフ・アイヒマンは、人間界で相当な顰蹙を買ったようだがー数多の人の死を見てきた私からすると、そうい言いたくなる気持ちは分からんでもない。死に際の人間は、統計的に見て、ほぼ同じことに後悔するからな
p62
人間が死に際に後悔する十のこと
- 本当にやりたいことをやらなかったこと
- 健康を大切にしなかったこと
- 仕事ばかりしていたこと
- 会いたい人に会いに行かなかったこと
- 学ぶべきことを学ばなかったこと
- 人を許さなかったこと
- 人の意見に耳を貸さなかったこと
- 人に感謝の言葉を伝えなかったこと
- 死の準備をしておかなかったこと
- 生きた証を残さなかったこと
自分の死後、人に伝えたいメッセージを残すこと
死ぬ間際、本当に多くの人間が、健康を大切にしてこなかったことを後悔する。暴飲暴食や過度の喫煙だけではない。体の異変を感じていたのに「気のせいだ」「なんとかなる」と自分に言い聞かせーほとんどの場合、目の前の仕事を優先するためなのだがー精密検査を受けずに病気を放置し、回復の見込みがなくなってから後悔する者たちのなんと多いことか
p65
このほかにもこのおちゃめな死神さんにはいろんな引用名言もあります。誰もが避けられないことだからこそ、その一つ一つが心に残ります。
私の場合は間に合ったけど…まさに後悔したのは病気のことでした
ここね、特に青文字の部分は私そのものなんですよ。病院に行かないのが自慢だった父が肺がんになって、手術のできるぎりぎりの大きさで見つかって、その経緯を誰よりも近くで見ていたにも関わらず、私自身もまた、一時は手術ができない大きさになり、他に転移があるまで、乳がんを放置してしまっていたんですね。
実はその数年前、右胸に異常を感じて大きな病院に行ったのですが、どこの科に行けばいいのかわからず受付で症状を説明した時に、先に皮膚科に見てもらったら「帯状疱疹」が見つかったんです。だから症状の全部がそのせいだと思って、しこりの部分を忘れてずっと皮膚科に通っていたんです。そして今度は夜眠れないほどの背中の痛みが続いたので、会社の近くのクリニックに行ったら、先生が「とにかく早く乳がんの専門医に見てもらって」と目の前で先方の先生に電話して予約まで取ってくれて、レントゲン写真と紹介状を渡されたんです。診察の結果背中の痛みは乳がんの骨転移による神経圧迫のせいでした。(その後放射線治療と抗がん剤治療のおかげで手術ができることにもなり、今も抗がん剤で生き延びてはいますけど)
思い返せば最初の時点で帯状疱疹と乳がんのダブルパンチだったんですね。その時気が付いていればとも思いましたが、それでも私の場合はなんとか間に合って、今年5年生存の壁を越えることができたんです。でも病気が分かった時に頭に浮かんだのはまさに、ここで言う死神の言葉そのものでした。
皆さんがもし自分の体に少しでも異常を感じているなら、まずは健康診断だけは受けてほしいと思います。もっとも私も毎年ちゃんと会社の健康診断は受けていたんですが、乳がん検診については忙しさにかまけて放置していました。仕事より命、分かってはいてもね。
十の後悔することもね、ほとんど当てはまります。これはもう色分けなんてできませんでした。項目にするととても淡々としたものですが、本編の中のやり取りはかなり切実なものでしたね。
今回のガネーシャの課題
まずは本編の課題
本書の使い方
本書に登場する「ガネーシャの課題」は、物語の主人公だけではなく、あなたの人生にも役立つ内容になっています。また課題は、過去の偉人たちが実行してきた習慣であり、あなたが夢をかなえたり成功したりするのを助けるだけでなく、「死ぬときに後悔しない人生を送る」ためのものです。
「人はいつか必ず死ぬ存在であり、死を直視することが生を輝かせる」ーこれは、遠い昔から繰り返されてきた言葉です。しかし、過去と比べて死に触れる状況が少なくなった現代は、自分は必ず死ぬ存在だと意識するのが難しい時代だと言えるでしょう。だからこそ、今、ここで立ち止まって考えてもらいたいのです。
あなたは、自分の人生に心から満足していますか?今の生き方を続けることで、「最高の人生だった」と笑いながら死を迎えることができそうですか?
そして、もし心のどこかで不安に思ったならーこのままの人生ほ続けたとしたら、死を迎えるるときに後悔しそうだと感じたならーガネーシャの課題を実行してみてください。主人公に残された時間はわずかですが、もしあなたが主人公の心境に寄り添い、いつか必ず訪れる「死」を意識しながら課題に取り組むことができれば、短い期間で大きな成果を手にすることができるでしょう。
さあ、それでは一度大きく深呼吸をして。
次の「ガネーシャの課題」へ進みましょう。
p72-73
- 健康に良いことを始める
- 死後に必要な手続きを調べる
- お金の問題がなかったらどんな仕事をしたいか夢想する
- 大きな夢に向かう小さな一歩を、今日踏み出す
- 人に会ってわだかまりをとく
- 「死ぬまでにやりたいことリスト」を作る
- 経験したことのないサービスを受ける
- 節約を楽しむ
- 思い切って仕事を休む
- 自分の体に感謝する
- 身近な人に感謝の言葉を伝える
- 周囲の期待と違う行動を取る
- 限界を感じたとき、もうひと踏ん張りする
- 両親の生い立ちを知る
「死ぬときに後悔しない」というのは、私自身も若い頃からポリシーにしてきたことです。何かを決めるときに「これで死ぬとき後悔しないかな?」というのが一つの判断基準ではありましたが、実際にはずいぶんと楽なほうに流されていて、ほんとうにいろんなことを「後回し」にしてきた気がします。
今の私にとっては最優先事項は「生きること」なので、ある意味楽しみとかは二の次になってしまいますが、具体的な行動ってなかなか決められないものですね。そういう意味でこの「ガネーシャの課題」は具体例もあるのでとっつきやすいと思います。全部は無理かもしれませんが、少なくとも今できることを一つずつクリアしていけたらいいなと思います。
ガネーシャ最後の課題
本書の使い方 ~最後の課題~
本書のテーマが、「死を直視することが生を輝かせる」である以上、「ずっと生き続けたい」「大切な人とずっと一緒にいたい」という思いがいつか断たれるという事実ーこの世界には「かなわない夢がある」という事実ーを避けて通ることはできません。しかし、闇があるところには必ず光も存在します。どんなに厳しく見える現実にも、いや、厳しく見えるからこそ希望の光もまた強く輝くものであり、ガネーシャは主人公に希望を灯そうとしています。ただ、もし今この瞬間、あなたに、「どうしてもかなえたい夢」があるのなら、この先を読むことはお勧めしません。
「夢は必ずかなう」と信じることは大きな原動力となり、夢を実現する可能性を飛躍的に高めてくれます。前出の「本書の使い方」で、「あなたは自分の人生に満足していますか?」という質問を強調したのも、人は、死を「夢の締切」ととらえることで、潜在的な能力と努力を最大限発揮することができるからです。「自分にはどうしてもかなえたい夢がある」と確信している人は以降の文章は読み進めず、これまでに出されたガネーシャの課題に取り組んでみてください。
ガネーシャは、こう言いました。「今、世の中の人が感じている苦しみの多くは「夢」が生み出している」人間はその歴史において、衣食住や医療などの環境を整え、おそらくこの文章を読んでいる多くの人は、日々の生活が保障された状態にあるでしょう。それは、過去の人たちからすると、「夢をかなえた」状態です。過去の人たちがこころから手に入れたいと思っていた夢の世界を、あなたは、今、生きています。
しかし、依然として、人々の苦しみは続いています。もしかしたら、過去の人たちが経験した以上の苦しみを感じているかもしれません。その大きな理由は、「今のままでは足りない」「あれを持っていなければ自分は幸せになれない」という強固な思いがあり、その思いにいつも駆り立てられているからです。手にすることができない未来ー夢ーに縛られ、囚われることで、「今」を苦しんでいると言えるでしょう。ただ、現代社会において、「夢を手放す」ことは容易ではありません。特にその夢があなたにとって、かけがえのないものであればあるほどー手放すときには、不安や痛みを伴うことになります。
しかし、その夢が、あなたを本質的に幸せにしてくれていないのだとしたら、手放す方法を学ぶ必要があります。なぜなら、夢は、手段だからです。すべての人の目的は「幸せになること」であり、夢をかなえることは一つの手段にすぎません。
ガネーシャは、人生で後悔しないために必要なのは、次のことだと言いました。「両方のやり方を知り、自分に合った方を選ぶ」
これと同様に、「夢のかなえ方」と「夢の手放し方」の両方を学び、選べるようになることは、後悔しない人生を贈る上で最大の助けとなるでしょう。そして、この二つを学び終えた時、あなたは、「夢をかなえるために努力する」「夢に縛られる苦しみから解放される」どちらの道にも進むことができる、本当の意味での「自由な人生」を手に入れられるはずです。
さあ、それでは準備の整った人は、一度大きく深呼吸をして。
最後の課題に取りかかりましょう。
p306-309
- かなえてきた夢を思い出す
- 他者の欠点を受け入れる姿勢を持つ
- 見る場所を変える
- 相手の背景を想像する
- 他人に完璧さを求めている自分に気づく
- つながりを意識する時間を持つ
- 喜怒哀楽を表に出す
本当の「自由な人生」のために
まさにいきつくところはそこなんだと思いました。自由な人生を生きる。後悔しない人生を生きる。私もこの年まで生きてくると、ある日突然命を失ってしまった人もたくさん見聞きしてきました。私の身内や友人の中にも何人もいます。ご本人の無念はいかばかりかと思いますが、残された人の想いのつらさは想像以上のものがあるものですよね。まさに「心の準備」ができているかどうか。
逆に私の父などは倒れて意識のないまま4か月、一度も目覚めないままこの世を去りました。家族としてはある程度の心の準備と、できる限りのことはやったという気持ちの区切りは出来ましたが、それでもやはり二度と会えない寂しさは、時折ふと心をよぎります。私自身もまた、一度は目の前に死を突き付けられましたが、とにかく「今できること」を積み重ねて現在があります。明日どうなるかは誰にもわかりませんが、少なくとも今は未来を考えることもできています。もう少し早くこの本に出合いたかったという気持ちは、多少なりともあるのですが、今だからこそ心に響くものかもしれないとも思います。一冊の本との出会いもまた「一期一会」なんですね。
ここに引用した部分はほんの一握りです。一つ一つの課題の経緯や、そのほかのエピソードも満載なんですが、ここで書いてしまうとネタバレにもなりますしね。とにかくストーリーも面白く、それでいてやはりこういうテーマなのでとても切ないとか哀しいシーンもあるんです。ただそれを乗り越えていくヒントも与えてくれています。
正直本当に死を突き付けられた時には見たくないものかもしれません。だからこそ自分も周りも健康な時に読んでもらえたら、そして実践できることがあれば、本当に人生が変わるかもしれない課題だと思います。
ガネーシャシリーズ一通り読み終えましたが、ガネちゃんほんとにかわいいですね。なんだかとても長い付き合いのような気さえしてしまうほどに、こんな神様いてほしいな~と思います。まあ実際に身近にいたらうっとうしいかもしれませんが…すぐすねるし、やかましいし、わがままだし…笑 でもそんなキャラクターだからこそ、何を言っても何をしても許されてしまう愛嬌がありますね。
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