- 書籍データ
- タイトル Think CIVILITY 「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略である
- 著者 クリスティーン・ボラス 訳 夏目大
- 出版社 東洋経済
- 第1刷 2019年7月11日
- 第8刷 2019年12月9日
長年仕事でいろんな人を見てきました。そして世の中には本当にさまざまな人がいるものだと思います。この本のテーマである「礼儀」ひとつとっても、どんな時も相手に礼儀正しい人もいれば、相手を見て使い分ける人もいて、どんなあいてでも常に人を見下すような人もいますね。
この本はアメリカの女性が書いたものなので、礼儀に対しして日本とどう違うのかな?という興味もあって読んでみたのですが、やはり「礼儀」そのものは世界共通のようですね。もちろん内容はさまざまでしょうけど。なのでかなり参考になりました。全部は無理なのでポイントを絞って書いてみますね。あとは実際に本でごらんくださいね。
なぜ礼節のある人は得をするのか
無礼さにはどのようなコストが伴うのか。また礼節はどれほどの利益をもたらすのか。
無礼さ、礼節は人から人へ非常に早く広まっていく。
その態度は、自分の周囲の人たちに大きな影響を与え、働いている会社全体にも影響を与えることになる。
本文 p1扉より抜粋
この本によると過去20年で無礼な人が増えているそうです。調査によると「少なくとも1週間以内に誰かにひどい扱いを受けた」と感じた人が、1998年には調査対象の1/4、2005年で半数近く、2011年で半数を超えたそうです。
- 上司の無礼な言動
- 部下を人前であざける
- 部下の仕事ぶりを常に過小評価し、自分の組織の中での地位は低いと思い込ませる。
- 部下を心が傷つくほどからかう。
- 成功した時の手柄は自分のものにするが、何か問題が生じた時には他人のせいにする。
どの場合でも重要なのは、その言動が本当に相手に対する尊敬や配慮を欠くものだったかどうか、ではない。重要なのは、された方がどう感じたかである。
本文 P5
これね、すなわちパワハラのことですよね。著者は悪化の理由を四つあげています。
- グローバリゼーション 文化の違う人たちが一緒にいる場合国によって礼儀の意味が違うから
- 職場環境とそこでの人間関係の変化 ストレス、トレーニング機会がない
- 発達したテクノロジー 面と向かって接する方法がわからない
- 無知 自己認識の欠如 他人を傷つけようとは思っていないのに傷つけてしまう
確かに無知ね…つまりデリカシーの欠如ということですかね?人がどう感じるかに鈍感な人は、結局無意識に無礼な態度になるのかもしれませんね。
無礼な人がもたらす5つの費用
読んでみると確かに無礼な人のもたらす損害は馬鹿にならないものだと思います。そんな人がいればまずみんな「黙って」その場から離れます。お店などなら二度と足を踏み入れないかもしれないですね。それによる損失は実はほとんど計算されていないんですね。で、的外れのマーケティングしてたりしてね。もちろん怖いから周りは指摘すらしませんよね。
人、企業が無礼な態度によって被る損失は、一般に思われているよりはるかに大きい。
理不尽な扱いを受けた人は、精神状態を正常に戻すのに力を使うため、集中力、注意力をそがれる。
企業内に無礼な人がいるとわかると、顧客はたとえそれを直接、みていなくてもその企業との取引を避けるようになる。
理不尽な態度は人の思考力を奪う。思考力を奪われた人は目の前にある情報にも気づけなくなる。
無礼な人が近くにいると、その影響を受けて自分も無意識のうちに破壊的、攻撃的な思考をしやすくなる。
本文 P33
確かに、どんなにいい雰囲気も、たった一人の態度でマイナスになりますよね。実際に損害計算して請求すべきかも…お客様に猫なで声出していながら、お客様の前で平気で部下を怒鳴り散らす上司…最低。お客様はしっかり見てますからね。
最近多いパワハラはまさにこの悪循環を作り出していますよね。自分で自覚してないからたちが悪いんですけど…一度鏡で見て~とか、ビデオ取って見せてやりたい人いますよね。
礼節がもたらす5つのメリット
一方礼節のある人の行動もまた、ほとんどの場合評価されていないのが現実のような気がします。とても感じのいい店員さんがいるからとか、そこの雰囲気がいいから行くという人は多いでしょうけど、それが直接その店員さんとかチームとかの評価にはなかなかつながらないものですよね。そこに実績という数字が付いてきて初めて評価されるのでしょうけどそれは上司が独り占め…なんてこともありそうです。
その人が下品であることを証明し、尊敬できないと思わせる言動を「無礼」と言う。無礼でないだけでは、ただ中立的なふるまいをしているにすぎない。礼節のある人とみなされるためにはそれ以上のことが必要だ。他人を尊敬し、また品位を感じさせる丁寧で親切な態度で、周囲の人たちの気分を良くしなくてはいけない。
礼節ある言動とは、つまり相手を丁寧に扱う言動ということだが、必ず心から相手を尊重する気持ちがないとうまくはいかない。見返りに相手から何かを得よう、自分の属する企業の利益につなげようという気持ちが背後にあると、いくら丁寧に相手を扱ったところで意味がなくなってしまう。
目的のためではなく、ただ互いを尊重し、良識を守るようにする。それが礼節ある言動につながる。
本文 P36-37
「礼節ある」レベルになるのは、なかなかハードル高いですね。目的のためにって人はかなりいますから。心がこもっているかどうかって、受け取る側は何となくわかるものですしね。まずは自分が礼節ある人になることが大事ですね。
個人編 3つのメリット
仕事が得やすい 「声がかかりやすい」何かを一緒にやろうと誘われる機会が多い。他人に優しく接している人、気分の良い接し方をしている人の方が、声がかかりやすい。能力を証明する機会も多くなるし、よい評判も広まりやすくなる。「能力はあるけれど無礼な人」との差は時間が経つごとに開いていく。
幅広い人脈が築ける たやすく大きなネットワークを築くことができる。礼節ある人は、発想、情報、人をつなぐ役割を果たすことができる。境界をこえることも容易にできるため、そういう人はソーシャルメディアだけではなく、当然、企業などでも力を発揮する。
出世の可能性が高まる 自分が礼節ある人間であるという証拠を見せると、周囲の人に有能なリーダーと思われやすくなる。優れたリーダーとみなされている人の多くが、他人から「思いやりがある」「協力的」「公平」という評価をされている。今、望ましいとされるリーダーは「気配り」「優しさ」「思いやり」など従来「女性的」とされてきた資質を持った人らしい。
もちろん、最も地位向上に役立つのは、仕事で成果を上げることである。ただ、礼節ある態度がその後押しになるのも確かだ。礼節ある態度とはたとえば、人に感謝する、人の話をよく聞く、わからないことは謙虚に人に尋ねる、他人の良さを認める、成果を独り占めせずに分かち合う、笑顔を絶やさない、といったことを指す。こうした態度は業績向上にも役立つ。反対に無礼な態度は、仕事で成果を上げるうえで足かせになってしまう。
本文 P34-48
ここ激しく同意します。ほんとにこういう人たちだけ出世してほしいものです。周りが礼節ある人たちだけならほんとに幸せですよね。ただね…現実はけっこうね。
組織片 2つのメリット
礼節ある上司のチームは高い業績をあげる リーダーがチームのメンバーに丁重な態度で公平に接すると、メンバーが個人としても、チーム全体としても高い業績を上げることがわかった。その場合チームのメンバーは自分に最低限求められるよりも上の仕事をする。チームの業績、創造性は高まる。良いのはまず、誰かが何かミスをしてもそれが早く見つかること、そして誰もが自分の意志で率先して行動を起こすこと、メンバーの精神的な消耗がすくないことだ。
礼節ある経営者は従業員に安心感を与える リーダーの礼節を示すちょっとした態度だけでも、企業全体にかなりの良い影響があるとわかった。それだけで、チームや企業に属するメンバーたちの態度、行動が良い方向に、チームや企業全体の価値を高める方向に変わるのだ。企業にとって良いのは、従業員が安心を感じられ、より幸福な気分になり、また自分自身もより良い人間であると思えるからだ。安心している従業員は会社により多くの利益をもたらすし、上層部からの評価も二倍になる。
本文 P49-53
成功しているリーダーの中には態度の悪い人もいるではないかという反論もあるだろう。そうした人たちは無礼であるという不利な条件をはねのけて成功しているということだ。無礼でなければもっと楽に成功できたかもしれない。
失敗するリーダーの多くには、無神経、人を不快にさせる、弱いものいじめをする、という共通の性質があるとわかっている。またその次ぐらいに多くみられるのが、よそよそしい、傲慢といった性質だ。もちろん、たとえひどい性質の持ち主でも、権力があれば多くの人は従うだろう。しかし、特に重要な場面で従業員は助けになってくれない恐れがある。
無礼な人が窮地に立つまで待ってたら、正直まともな人たちが潰れるかやめるかしてしまいますけどね。
無礼は無礼を生み、礼節は礼節を生む
無礼は伝染して、次の無礼を生む 誰かに無礼な態度を取ること、取られることを「自己完結的」な体験だと思っている人は多い。直接、やり取りをした当事者同士で完結することだと思っている人が多いのだ。だが、実際にはウイルスのように人から人へと伝染していく。そのご、かかわった人たちすべてに悪影響を与え、人生を悪いほうに導くことになる。
誰も気づかないうちに、無礼さの影響は社内全体に広がり、すべての人をより不親切に、より不寛容にし、すべての人の元気、楽しさを奪う。その分だけ悪い企業になっているということだ。
P57-60
人の話を遮る上司とそれに倣う部下 例えば誰かが話をしているときにそれを遮ってしまう、ということは十分にありえるだろう。この、人の話を遮るという行為は非常に無礼だが、私の調査によれば、世の中で「上司」と呼ばれる人によく見られる行為でもある。
無礼な態度に触れたら必ずそのあと、他人に無礼にふるまってしまう、ということではない。仮に無礼な態度に触れたとしてもその直後に礼儀正しい態度に触れれば、それで上書きされ、心が悪影響から逃れることもあり得る。
無礼さは脳に焼き付く 自分が直接、無礼な態度を取られたわれではなく、そばでそれを見ていただけでも、心と身体の両方に悪影響が及ぶことはある。脳にはその痕跡が必ず残る。脳に二度と消えない入墨が入るようなものだ。
本文 P65-70
いい態度に接すると、いいことに注意が向く 無礼な言動の悪影響は短時間のうちに広がるし、影響はその言動の後も長く残ることになる。しかし、礼儀正しい言動にも同じことが言える。一部の社員がほんの少し礼儀正しい行動をとるだけで、相手の社員もすぐに同様のことをするようになるとわかった。そして短時間のうちに全体に礼儀正しい行動が広まる。
私たちの一人一人が些細な行動に注意すれば、温かく、互いのことを認めあえる雰囲気、皆に元気を与える空気を作り出すことができる。これは今日から、今からでもできることだ。すぐに始めない理由はどこにもない。
本文 P71-73
ここまで無礼と礼節についてですが、ここでやっと第一部が終わり、第二部からは具体的な方法論が展開され、第四部まで続きます。
中には文化の違いもあるのか、それとも個人の考え方の違いなのか、首をかしげるやり方もあるのですが、どうやったら礼節のある人になれるのか、どうしたら礼節のある企業(組織)になれるのか書かれていました。確かにすぐにやらない手はないと思います。
そして最後に
突き詰めれば最も重要なのは人間関係である。そして、礼節は人間関係の基礎となる。他人に対する態度、ふるまいに敬意があれば、それは自分自身を前進させることにつながるし、キャリアにも必ず良い影響をもたらす。他人と良好な関係を結ぶのに役立ち、人生を良い方向に導くことにな。
あなたに礼節があれば、仕事も、仕事を離れた人生も必ずうまくいくはずだ。あなたが何歳でも、どういう環境にいようと、礼節を高める努力はできる。
あなたは今日会った人にどういう態度を取っただろうか。もしかしてあなたが当たり前だと思っている態度はすでに時代遅れかもしれない。あなたは周囲の人たちを元気づけているだろうか、それとも意気消沈させているだろうか。それをよく考えてみよう。
自分をどういう人間にするか、私たちはそれを自分で選ぶことができる。良くなろうと決意することはいつでもできる。
あなたは果たしてどういう人間になりたいだろうか。
本文 P310-311
もちろん、どんなに礼節を尽くしても、無礼な人間と全くかかわらずに生きていける人はいないと思います。ましてや無礼な人は死んでも治らない人もいることでしょう。一見声の大きな威圧するような人が得をして、むしろまじめで礼儀正しい人が損をするような世の中でもありますよね。でも自分の心の平和のためにも、周りの人の心の平和のためにも、礼節のある人を目指したいなと思った一冊でした。
私の経験でも相手を見下したような態度の人、例えばある時受けた電話ではおばさんが「女じゃ話にならないから男の人出してよ」って、思わずあなたは女じゃないのね?と心の中で思ったこともありますし、聴き返されただけで怒鳴り出すような人もいますよね?自分の言い方が悪いのに理解してもらえないと怒りだす人のほんとに多いこと…世の中とはいえそういう人を見るたびにがっかりします。
かと思うと、些細なこと一つに「ありがとう」とにっこり微笑む人を見ると「あ~すてきだな」とこちらも幸せな気分になりますしね。多分そのありがとうにその人の人柄が出ているからだと思います。できれば自分もそちら側の人でありたいなと思いますね。まずは相手を尊重することから…始めてみようと思います。
普段から結構無礼な態度を目にする機会も多いので、世の中が少しでもいいほうの連鎖でよくなっていくことを願いたいものです。
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