- 書籍データ
- タイトル 天才IT大臣オードリー・タンが初めて明かす問題解決の4ステップと15のキーワード
- 著者 オードリー・タン(唐鳳)/黄亞琪
- 訳 牧高光里
- 発行 (株)文響社
- 第1刷発行 2021年12月14日
- 第3刷発行 2022年1月21日
天才IT大臣のものの考え方は目からうろこがいっぱい
オードリー・タンさんの名前を直接知らない方も、コロナ初期、台湾でマスクマップを短期で作り上げたIT大臣と聞けば、あ~あの人!と思う方も多いと思います。当時私もどこかのIT大臣とはとんでもなく違うわ~と思ったものですが、ある日本屋さんのたくさんの本の中からこの本に出会いました。解決したい問題があるわけではなかったのですが、「この人の思考法ってどんな感じなのかな?」という興味がわいてきたからです。まずはどういう人かというと。
生まれつき重い心臓病を患っていたオードリーは、天才であるがゆえに小学校では壮絶ないじめにあい、中学校を自主退学し、15歳で起業するなど、ほとんどの人が経験することのないような成長過程を体験した。
やがてトランスジェンダーであることを公表し、30代で早くもビジネスを引退して、公僕になると決意した彼女は、台湾最年少の若さで政務委員に就任する。新型コロナウイルス感染症との闘いにおいては、いわゆるマスクマップに代表される情報共有の最大化と離弁花を図ってウイルスに対する民衆の恐怖心を最大限に払拭し、国際邸にも高い評価を受けた。
また、感染拡大が深刻化すると、今度は公的部門や民間部門と協力して、たった5秒3ステップで市民が自分の行動履歴をスマートフォンで申告できる「本人確認登録システム」を、わずか三日で開発したことでも記憶に新しい。
降りかかる数々の難題に対し、オードリーはその都度ベストな対策を模索し、講じてきたといえるだろう。
p1-2 はじめに より
中学中退で独学で大臣、しかも史上最年少でね…まさに天才というのはこういう人なんだな~と。学校の枠に入りきらない器だったんですね。そして本文に詳しいのですが、この方著作権を放棄しているんですね。
四つのステップと15のキーワード
- STEP1 問題と向き合う
- 01.解決志向
- 02.エンパシー
- 03.多重視点
- 04.取捨折衷
- STEP2 問題を受け入れる
- 05.持続可能な開発
- 06.集合知
- 07.不完全主義
- STEP3 問題に対処する
- 08.透明性
- 09.ソーシャル・イノベーション
- 10.市民協力
- 11.熟読
- STEP4 問題を手放す
- 12.競争からの脱却
- 13.自分と向き合う
- 14.至高の喜び
- 15.死を見つめる
STEP1 問題と向き合う
01.解決思考 すべての人の側になって対話する
対話とエンパシーがなければ共感は起きないし、共通認識やシェアも生まれない
p17より
オードリーにとっての合理的な解決方法・分析方法は「傾聴」して問題を理解して調和させることだそうです。一番大切なことが「聞くこと」しかも耳で聞くのではなく「傾聴」つまり、心で聞くということなんですね。少し聞いて自分の経験に当てはめて理解したつもりにならないこと。聖徳太子の昔から「聞くこと」の重要性は日本でも言われていますが、実際にちゃんと聞いている人って、思った以上に少ないと思います。自分が「聞きたいこと」だけ聞いてあとはどうでもいいっていう反応、確かに多いなと実感しますね。
自己矛盾がおきないように、これもオードリーが心がけていることだそうです。自分の考えがある状況に合わない場合、無理やり相手に合わせるのではなく、自分の考えを事実に合わせて修正していく。つまり、ちゃんと中身を理解して納得して自分の考えの直すべきところを直していくということなんでしょうね。これは、いうほど簡単なことではない気がします。つい「でも」って言ってしまいますよね?自分の考えってなかなか変えられないと思うんです。それか自分では納得していないのに合わせてしまうからあとで整合性がなくなっていくんですね。
まず「問題を見つける」一番簡単な方法は、その問題に実際に直面した人の話をよく聞くことだと思っています。どんな状況に置かれているのかをありのままに説明できるのは、その立場にいる人だけなのですから。
言い換えれば、各当事者の側に立って、たくさんの当事者からひたすら話を聴くこと、これが問題を一番手っ取り早く見つける方法です。
p20 向き合って、受け入れて、対処して、手放す
その後二段階の問題解決プロセスは
問題に直面した人それぞれにその人なりの解決策があるはずだから、よい案があったらまずは提案してください
p20
いろいろな解決策が集まったら一歩引いて、みんなに共通する価値観が集まっている場所に立ち返る
p20-21
つまりここでも「聞くこと」の大切さが浮き彫りになりますね。でもオードリーの考え方はここでとどまりません。常に賛成と反対の意見を視野に入れて、他の人の意見を考慮できるようにするには練習が必要だとも言います。
何かを提案する際には、次のようなことを考えてみてください。
〇この提案によって悪影響を被るのは誰か
〇もっとよい解決策はないのか
〇別の視点からアイデアは出せないのか
自分へのこうした問いかけが習慣化すれば、常に頭の中で多様な意見にフォーカスするようになり、アイデアに統一感が生まれて、みんなに共通する価値観がいつしか浮かび上がってきます。
p21
翻って、日本の行政の仕組みに感じていた違和感、なんだかわかったような気がします。人の話を聴かず、自分たちの考えだけで決めたことを、実務者に押し付けてあとは知らんぷり…問題が起きても丸投げでは、問題が解決どころか悪循環にしかならないですね。ちょっと爪の垢を~「傾聴」までは無理でも、せめて「ちゃんと聞くこと」ぐらいはね…
02.エンパシー 「傾聴」は問題解決の基本
相手の話を理解する唯一の方法は、相手の話に真摯に耳を傾けることだ、と彼女は言う。
相手の話が終わっていないのに口を挟めば、共通認識も生まれず話し合いも決裂しかねないからだ。
p31
ここでも「傾聴」出てきましたね。このインタビューでどのテーマの時でもほぼ毎回「傾聴」が出てきたそうです。
オードリーは、誰かとの対話はすべて知識のインプットであり、それは粘り強い対話に存在する「傾聴と尊重」という二つのキーポイントの上で成り立つのだとも話している。
p31
人はだれしも自分の価値観に沿って人の話を判断する傾向がある。そのため、一つの「言葉」に対し百通りの「聴き方」が生まれえる。話を聴いても正しく理解していなかったり、言外の意味や相手の真意をくみ取れていなかったりすると、共通認識が生まれるどころか、対立のきっかけにもなる。
p31-32
このあたりほんとに、思いきり頭をブンブン縦に振ってしまいますね。おざなりに話を聴くとむしろ問題を作る側に回ってしまうんですね。実際にトラブルばかり起こしている人を見ると、この言葉実感します。一回で物事を理解できる人もいるし、十回言っても理解できない人もいるんですよね。
「エンパシー」は、自分の経験から生まれるものであって、単純な同情心ではありません。相手の心に耳を傾け、それから自分の経験に基づいて相手の状況を想像し、理解することです。
一方「シンパシー」とは、感情の共有、つまり共感です。
p35
ここでは想像力も必要だとわかります。病気になってみるとわかるのですが、相手の状況をすぐにくみ取れる人もいれば、ひどい人には病気のマウント取る人もいますからね。相手が今どういう状況で、どういう言葉を言われたら救われて、どういう言葉を言われたら傷つくか…もちろん聞く側によっても同じ言葉が別の意味になることもあるので、決して一概に言うことはできませんが、配慮ができる人ってこの「エンパシー」と「シンパシー」の力があるんですね。
そしてこの章には
人の話を聴くときには、ただ黙って聴くだけでなく、頭の中に反論や意見が湧いてきてもそれらは無視して聞き終えるように心がけていけば、早急な判断を下さなくなるでしょう。この練習を3週間続けると、対話力がつき始めます。
頭で考えるより、実践あるのみです。
p37
ここ、私には耳が痛いかも。せっかちだし、いわゆる「早合点」するタイプなので…自分を見直したいと思います。ぜひ「まずは相手の話を聴く」訓練をしたいと思います。
あらためて「聞く耳を持つ」人に一歩でも近づきたいと思いました。そしてこの章でオードリーは、ただ聞くだけではなく、最終的にはその知恵を「社会に提供できる」ことを示しています。つまり「インプット」だけで終わらず、少しでも「アウトプット」してくださいね、ということなんでしょうね。それが「共有」することでもありますね。
03.多重視点 多重視点というシンパシー
「多重視点」とは、「自分」がいろんな立場からのものの見方をすること、「多様な視点」とは一つの部屋の中の別々の人がいろんなものの見方をすること。
私は常に「すべての人の側に立つ」ことを提起しています。ですが、取りこぼされた立場があることに気づいた場合は、その人の視点を読み取って、私のポジションをその立場に移動させてしばらく生活してみなければ、私が真の意味でその人の視点を手に入れることはできないだろうと感じています。
そのため、まずは「多重視点」で傾聴する必要があるのです。
p49
このように、自分の中にさまざまな視点を積極的に取り込むと、ものごとをより深く理解できるようになり、当然ながら知識も増えます。
つまり、広い知識を備えた人しか「多重視点というエンパシー」を実践できないのではなく、「多重視点というエンパシー」を実践すればその分だけ知識が増えるのです。
p49
多重視点、ちっょと難しい言葉が出てきました。人は自分の立場でしかなかなか物事を見ることができませんよね。特に感情が絡んだ時その視野はもっと狭くなると思います。いろんな立場から物事を見てみると、確かに物事は立体的に見えるでしょうけど、そういうことができる人ってオードリーさんのような人だけなんじゃないの?なんて思いがちですが…練習でできるんですって。
すべての声が智慧なのです。私たちが言論の自由を欲するのは、多様な見解や複数の視点を求めているからなのです。
何かを見たり考えたりするとき、たった一つの視点や文脈に沿って議論する方法しかないのではあまりに窮屈です。そこからはゼロサム(片方が得をすると片方が損をする状況)の結論歯科余れないでしょう。
p50
ゼロサム思考、これは本当にありがちですね。多重視点があれば、確かにそういう思考に陥る危険性は低くなる気がします。オードリーさんは「鑑賞者」としての立場を推奨しています。わからないものは無理やり理解しようとしない、もしかしたらいつかわかる日が来るかもしれないと、「抽象画」を見た時のことを例にして言っていますが、わからないものに対して恐怖心のある人ほど、分からないのに批判するということをしがちですね。見たものをありのままに記憶しておけば、今は分からなくてもいずれパズルのピースがはまる日が来るかもしれないと思うと、ちょっとワクワクするかもしれません。見た時に無理やり自分の狭い型にはめ込んだりしら、ピースがゆがんで永遠にはまらないかも…なんても思います。
04.取捨折衷 世界は二項対立よりもはるかに複雑なもの
意見や観点が交錯しているからこそ、どの意見にも価値がある。よって協働には「包摂、協調、折衷」という三つの概念が不可欠だ。とりわけ、本項のキーワードである「取捨折衷」は、多くの選択肢の中から一つを選ばなければならないものではなく、複数の選択肢の中からよい部分を選び、組み合わせて活用するという概念である。
p59
話していると、自分では思いつかない提案が飛び出すことがありますよね。その意見を出した人もほかの人の意見を聞いたことによって発想ができるという。そういう意味で話し合うというのはとても重要ですね。ただそれが自己主張の場になってしまうと争いの種になりますが、よりよいものを一緒に作り出すということができれば、とても素晴らしいことだと思います。
私が伝えたいのは、みんなが反対しない状態になっていればそれでいいし、契約書への署名に全員が同意した状態を求める必要はない、という点です。創造的な空間はそのような状態からしか生まれないからです。
p64-65
つまり、反対さえなければ強引な結論は必要ないということですね。ディスカッションによって、結論はどんどん変わっていくということでしょうね。そして
コンテンツは、よりよい未来のために公開する
私がこれまで話したり書いたりしてきた素材(コンテンツ)の透明性と公開、コンテンツの蓄積にこだわるもう一つの理由は、そうしておけば未来の誰かが、今の私には用途が分からないコンテンツの活用方法を思いついてくれるからでてす。つまり未来のために公開しているのです。
p67
これは性善説によらないとなかなかできないことだと思いますね。とても素晴らしいのですが、やはり作った人の権利を守ることも必要なのでは?と凡人の私なんかは思ってしまいます。どちらがいいのか、それはきっと一長一短で、それでもオードリーさんは未来にかけたんですね。やはり考えのレベルが違うと思いました。
続きはぜひ本書で
こんな風に一つずつインタビューとご本人のコメントで展開していく本書です。ここまででもいろんな学びがありますが、これ序の口なんですよね。私のレベルだと多分一度読んでも理解できていない部分が多いと思うので、こうしてブログで一つずつ確認しながら書いていくことは、本当に勉強になります。この後の部分もしっかり読み直して、自分で取り入れられることがあれば、ぜひ少しでも行動に移していけたらと思います。
そういえばいじめにあったという話、満月珈琲店のエピソードを思い出しました。まさに特別な人ですよね。今いじめにあっている人やパワハラに悩んでいる人にも、何かが伝わるかもしれません。
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