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緊急事態宣言の夜に ボクたちの新型コロナ戦記2020

  • 書籍データ
    • タイトル 緊急事態宣言の夜に ボクたちの新型コロナ戦記2020
    • 著者 さだまさし
    • 発行所 株式会社 幻冬舎
    • 第1刷発行 2021年2月15日
目次

今も続く私たちの「戦い」

「緊急事態宣言の夜に」 さだまさしさんのエッセイです。サブタイトルは「ボクたちの新型コロナ戦記2020」となっています。まさに現在進行形の戦いの記録ですね。

わたしにとっての「さだまさし」さんって?

 昔からさだまさしさんの歌が好きで、特に歌詞の言葉が大好きで高校生の時に唯一買ったレコード(時代を感じますよね)は、さださんのものだけでした。さださんの歌で日本語の美しさをたくさん教えてもらった気がします。そして言葉の持つ力を、歌のもつ力をいつもいつも感じさせてくれました。

あなたは教えてくれた 小さな物語でも

自分の人生の中では 誰もが主人公だと

「主人公」より

笑ってよ君のために 笑ってよ僕のために

僕たちは小さな舟に 哀しみという荷物を積んで

時の流れを下っていく 舟人たちのようだね

君のその小さな手には 持ちきれない程の哀しみを

せめて笑顔が救うのなら僕は道化師になれるよ

笑ってよ君のために 笑ってよ僕のために

きっと誰もが同じ河のほとりを歩いている

「道化師のソネット」より

どんなにせつなくても 必ず明日は来る

ながいながい坂道のぼるのは あなたひとりじゃない

僕は神様じゃないから 本当の愛は多分知らない

けれどあなたを思う心なら 神様に負けない

たった一度の人生に あなたとめぐりあえたこと

偶然を装いながら奇跡は いつも近くに居る

ああ大きな愛になりたい あなたを守ってあげたい

あなたは気付かなくても いつでも隣を歩いていたい

「奇跡~大きな愛のように~」より

とても切なくてやさしい言葉をたくさん教えてもらった気がしますが、ご本人はいたって陽気でおしゃべり好きでコミカルな歌もたくさんありますよね。どれもこれも「情景」が目に浮かぶのがさださんの歌の特徴のような気がします。

 特に好きなフレーズは上記のものなどで、ほかにもたくさんありますが、いつも人生の悲しみの先に希望を教えてくれていた気がします。小説も書かれていますが「解夏」とか「眉山」とかは映画にもなりましたね。

 そんな中で今回はこの本を読んでみました。

いまだかつてない長い長い災難のトンネルの中で それでも前向きなエッセイです

 表紙には「コロナでもただでは起きない」そして「小さくてもできることを探そう」というサブタイトルが付いています。とてもさださんらしい前向きな考え方は相変わらずだな…と思います。そして勇気をもらえる本です。

まえがきにかえて「ショーを止めるな!」

2020年2月13日以来休止されていた「さだまさし」コンサートが2020年9月1日、約6か月ぶりに開催されました。コロナ感染の不安を抱えながらも、さださんは「このままでは音楽が止まってしまう」という思いで、有観客のコンサートに踏み切ったそうです。

音楽は平和の象徴です。音楽は希望です。

世の中が不幸になった時には必ず音楽の自由が止められる。僕は常々そう言い続けてきましたが、まさに今その不幸に見舞われたのです。

だからこそ今、勇気を持って、安全に音楽を活かさなければならないという「祈り」を込めてコンサートを再開する決心をしたのです。

p10 より

実際にこの時ほとんどの音楽関係者は仕事がなく、生命の危機ともいえる状況だったそうですが、世の自営業やフリーランスの方々の多くはおそらくよくわかるのではないかと思います。

そのために徹底してPCR検査を始め対策を行いながら2021年1月9日までの31公演を無事終えたそうです。そして

さて、ではコンサートができない期間、僕は何をしていたのか。

ミュージシャンとしての活動は出来なくても、誰かのお役に立てることは幾らでもあります。

p16 より

ここがまさにさださんの真骨頂ですよね。そして実際に動かれたようです。

第一章 2020年のさだまさし

仕事が次々とキャンセルになって、スケジュールがぽっかりと空いてしまった時期…さださんは最初はレコーディングをされていたそうです。それが終わり自粛生活に入ると本をたくさん読んだそうです。そして次の小説の勉強、そして勉強に疲れたら大好きな落語のDVDを見て過ごしたそうです。そして緊急事態宣言。

この度の「緊急事態宣言」は、新型コロナウイルスの蔓延が私たち日本国にとっての『有事』である、ということを国が国民に対して「宣言」したことになります。

つまりこの新型コロナウイルスとの戦いは『戦争』と同じということです。

しかし国同士が争う『戦争』と決定的に違うことは、この病魔との戦いは「私たち国民」の力だけで乗り越えることができる(また、乗り越えなければならない)ということです。

つまり「自分の健康を守る」ことはこの国の自由を、民主主義を護る戦いであって、それに勝つことが国民の責任であろうと僕は考えます。

治療薬やワクチンという武器を全く持たない私たちにとって、この戦いは「自分が罹患しない」ことでしか「愛する人を守る」ことができないわけですから、まずイライラ悶々とした「不自由で不安」なおのれの心の苦しみとの戦いに勝たなければなりません。

p32-33

(二年後の現在はワクチンの状況は変化しましたが、治療薬は現在も実用化できていませんね)

 この章の中にさださん自作の歌「緊急事態宣言の夜に」の歌詞が書かれています。その時の思いをぶつけるような歌詞で、音源化はされていないみたいですね。YouTubeにはライブ映像も出ているようですが…その歌詞の中に「お前のおふくろ死なせたくないんだ、大切な人をなくしたくないんだ」という言葉があります。さださんはいままでの「大好きだから一緒にいよう」が「大好きだから会わないでおこう」が正解になってしまったと書いています。会いたい人に会えない、そんな思いをほとんどの人が経験しているんですよね。私も入院中の母には、すでに半年以上面会できていません。

お前のおふくろ死なせたくないんだ

ほんとに誰も死なせたくないんだ

俺たちがウイルスに侵されないことだ

今何よりそれが俺たちの闘い

元気なようでも かかっているらしい

今度の悪魔は まことにいやらしい

ウイルスを周りに撒き散らさぬように

自分を疑え まず自分を疑いたまえ

「緊急事態宣言の夜に」より

 そして「風に立つライオン基金」の皆さんは、メンバーの多くが医療関係です。なので医療現場の問題もすぐに上がってくるんですね。そこで彼らは「医療物資」の不足を聞いてすぐに動き始めたそうです。そして初めての医師の派遣も行ったそうです。その間九州の豪雨被害も発生し、かなりの忙しさだった様子は本文に詳しいです。

今回のコロナ過によってさだまさしの出番が増えました。

決して本意じゃないですが、「コロナだから、さだまさし」と言われるくらいニーズが高まったのです。

p128

「今、コロナ過で聞きたい歌」というカテゴリーは僕にはピンときませんが、そこに選ばれる歌は、不思議に僕が永年歌い続けている歌ばかりなのです。『道化師のソネット』や『主人公』や『風に立つライオン』、そしてリクエストが多かったのが『いのちの理由」です。

p128

もろに私が好きな歌とかぶっています。辛い時に聞きたい歌と言われるのは、多分今までずっとさださんが作り出してきた歌の優しさを感じるからだと思います。「いのちの理由」に至っては、浄土宗から依頼されて作った歌とのことです(さださん自身は浄土真宗だそうですが、そのエピソードも載ってます)。

しあわせになるために 誰もが生まれてきたんだよ

悲しみの海の向こうから 喜びが満ちてくるように

私が生まれてきた訳は 愛しいあなたに出会うため

私が生まれてきた訳は 愛しいあなたを護るため

「いのちの理由」より

それからポール・サイモンさんとのお話もありました。

第二章 風に立つライオンとさだまさし

「風に立つライオン基金」という2015年に設立された基金は、今回もよりパワーアップして活動されていたみたいですね。この本の中にもいろいろと書かれています。「風に立つライオン」という歌に心ひかれた俳優の大沢たかおさんが、さださんに熱望して映画化を実現、しかもケニアロケまでして取り組んだ作品です。そして映画から広がっていった人脈のもとに設立された基金なんですね。そしてその基金は東日本大震災のときもたくさんの方に支援を届け、そして今回のコロナ過でも医療チームの派遣までされたようです。

私もこの映画は動画配信で見ましたが、ほんとにいい映画でした。思えば大沢たかおさんはさださんの作品とは縁が深いですね。「眉山」にも出ていましたが、私は「解夏」の徐々に視力を失っていく青年の役が今も心に残っています。

風に立つライオン基金とは

国内、海外を問わず、「災害に苦しむ人を直接的に支援するのはもちろん、支援活動を行う人を支援していく」ことを目標に立ち上がった

p250

目標は「場所」「人」「仲間」の育成


 日本中の、いいえ世界中の人が、コロナ過で今も苦しんでいる最中ですが、さださんはいつも、できないことを嘆くのではなく、人とのつながりの中から自分たちができることを探して行動する、一貫した姿を見せてくれる人です。思えば東日本大震災の時もいち早く現場に駆けつけてくれました。音楽でできることだけではなくお金を募り人を募り、有名人だからこそできる支援を常に続けて来られた方ですね。

そんな中彼が力を入れているのは「ふんわりチャンポン大作戦」で、公的な活動は2021年12月までとのことでしたが、高校生たちも活躍していて、「高校生ボランティアアワード」というものもあるそうです。未来に託す思いも人一倍のようですね。

 お盆を過ぎてまた感染者が一気に増えているみたいです。おそらくはもうよほどのことがない限り「緊急事態宣言」は出されないかもしれませんね。私も今まで高熱のため二回PCR検査と抗原検査を受けました。私の熱の原因はほぼ抗がん剤のせいだとは思うものの、先生に相談して念のための検査で、幸いにしてすべて陰性、熱もすぐに下がり事なきを得ましたが、熱が出た時の不安はほんとに他人ごとではありませんでした。治療薬ができるまではおそらく何度も山を乗り越えていかなければならないと思います。

 私たちにできることはほんとに少ないかもしれないけれど、形にできる人たちを応援することで、何かの助けになれるかもしれない…そんなことを考えさせられました。

ご本人は言われてたこと全部知ってた…

僕は当時ヒット曲が出る度に悪口を言われてきました。

まず『精霊流し』で暗いと言われました。僕は胸の内で当たり前だ、亡くなった人を偲ぶ歌なんだ、「暗い」という評価そのものがおかしいと反発しました。

『無縁坂』ではマザコンだと、母を歌うだけでマザコンという言葉しか浮かばない浅い批判には笑うばかり。

p47-48

『雨やどり』で軟弱、『関白宣言』で女性蔑視、戦争映画の主題歌『防人の歌』は好戦的で右翼的だ、『北の国から』ではあれが歌詞か(笑)

さだまさしが嫌いだ、と言ってくれればわかりやすいのにねえ。

p48

ほんとにね~あの頃私もこの言葉全部耳にしてましたよ。やっぱりご本人は全部知ってましたね。

でこの続きに遠藤周作先生とのやり取りが続きます。

遠藤周作先生に初めてお目に掛かったのは20代のころでしたが、いきなり「君はあれだろ?同業の同じ年代の仲間に嫌われてるだろ?」といわれておどろいたことがありました。

「はい。先生、僕には何か嫌われる理由があるんですかねえ」とうかがうと、「若い頃、俺も嫌われたんだよ」と思いがけない答えでした。

「人間には嫉妬があるからな。同年代の同業者はね、他人が売れるってだけで嫉妬する上に、君のようにちゃんとやられると文句が言えないから、結果、嫌うしかないんだよ。だから男の嫉妬には、おい、気をつけろよ」

p48

ここの部分、私のような凡人はそんなに経験ありませんが、今まさに悩んでいる人がいたら救いの一言かもしれませんね。羨ましいから嫌うしかないんだと思えば、かわいそうなのは自分じゃなくて相手ですよね。そんなもんだと思えばスルー出来ると思いますし、かかわらなければいいですもんね。まあ…避けようがない相手の場合は、また別の悩みがあるとは思いますが。嫌われてなんぼと思ったらかなり気が楽になりそうですね。

ネット上の誹謗中傷と日本人の日本語力についてのさださんの想い

さださんは情報によるパニックの怖さを挙げています。そしていわれのない誹謗中傷への怒りも感じているそうです。

SNSでの個人攻撃は、大きな社会問題になっています。

どなた様か知らないけれども、偉そうに言いっ放すだけで、後は野となれ山となれで、一切合切責任など取らないという姑息さは哀しさを通り越して怒りすら覚えますね。

自分が言ったということがバレない匿名「#名無しさん」だから言える。見下げ果てた卑怯卑劣の人たちです。

一度ネットに投稿した言葉は決して消えません。人への悪口も陰口も、嘘でさえ永遠に残っていきます。悪意のある言葉を公の場で発信するということは、天にツバするのと同じ、これは必ずいつか自分に返ってきます。

p114-115

私もここ、激しく同意です。日頃感じていることまさにそのもの。匿名性があるとはいえ、SNSではいつかはバレるものだと思います。公共の場で人を罵れば、それは自分の価値をどんどん下げていることだと思います。そんな人に同意するのは、結局同じ種類の人間だけ、そしてお互いに罵り合いになるのが落ちですものね。ツイッターとかインスタグラムとか、都合が悪いと削除したりアカウントを変えたりする人もいますが、どこかの誰かがスクショとかしてるものですしね。人の尻馬に散々乗っておいて「そんなつもりじゃなかった」と言っても、言われた側が本気で調べて訴訟を起こしたら…そんなことも想像できない頭で人の批判なんてね。

それからもう一点

公の場と自分一人の閉じた場が区別できないから起きるハラスメントという問題を考えるとき、日本人は日本語が下手になってきていると感じます。

現在の状況や自分の主張、疑問などを相手にわかるように、穏やかな言葉に変えて伝える能力が落ちているのです。同時に聞く力が失われています。

「話し上手は聞き上手」という言葉の逆、「話下手は聞き下手」なのです。

話すときに相手に理解してもらうだけの日本語力の無い人は、どんな上手な相手の言葉を聞いても理解できません。お互いに日本語力が低いと、発言者と聴き手双方に不快な思いが募ってゆくだけなのです。

p115

まさにコミュニケーション力の問題ですね。でもこれはほんとに日常的に感じることです。私レベルでも感じるんだから日本語の達人レベルのさださんには、おそらく耐え難いほどの違和感を感じているんだと思います。人は「話しても理解してもらえない」ことにいら立ちを感じると言われていますからね。

言葉こそ、我々のコミュニケーションの上で最も大切にしなければならないものです。

p117-118

「言葉」、そして人との「距離感」、それがどれだけ大切なものか…願わくば「失って初めて気づく」という事態は避けてほしいものですね。

最後に、私は「まだ」かかってはいませんが、検査をしてみないと100%とは言い切れません。今日が無事でも明日どうなるかは誰にもわかりませんよね、それこそ神様でもない限りは。

コロナの先が見えないまま日々過去最高を更新している今、改めてこの本に書かれていることに立ち返ってみるのもいいかもしれませんね。そして「今できること」を探していきたいと思っています。

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